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イラストレーターまつながみかのafricanとつぶやきなブログ

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18.行こう!深夜のコンビニへ! 

 

そう、私は甘いものがどうしても食べたかったのだ。

それはひと気も少ない深夜のコンビニエンスストアー。
いつものように「いらっしゃいませ~。こんばんは~」
フレンドリーにやたら語尾を伸ばすのは
よく見かける60代の男性店員だ。
白髪が頭髪の約65%を占める痩せ型のこの男性は、
言うなれば
木造アパートの二階に妻と二人暮らしで、会話もあまりない。
金にも縁がない人生でしたが、
象印の湯沸かし器は20年経っても健在で、まあそこそこ幸せです、
といった風貌だ。

私はぺこりと申し訳程度のおじぎと共に店内に入り、
深夜の甘味を求めてアイスコーナーをチェックした後
ぐるりと足早に一番奥のデザートコーナーへ向かった。
そこにはもうひとり、秋田の居酒屋で働き者です、といった風の
ちゃきちゃきと気立ての良さそうな、
色白で、ぽっちゃりとした女性が商品の並べ替えをしていた。
年は30代後半といったところだろうか・・・。

カラーが落ちだしたショートカットの彼女にちらっと目をやり、
私は棚にずらっと並ぶ新商品デザートの物色を始めた。
盛り沢山なデザートコーナー。
コーヒーババロアが美味しそうだ。

するとしばらくして、横からこの女店員がつぶやくように言った。
「誰ぇ、この○○(賞味期限チェックらしい)したのぉ?全然ダメっ!」
どうやら話した相手は先程の男性店員。
気がつくと彼も私を挟むように近づいて来ていたのだ。
仕事のやりとりか。コンビニもイロイロ大変だ。

ところが次の瞬間だった。
私の耳に信じられない言葉が入ってきたのだ!

「怒った、か・おっ、カワイイなぁ~」(ため息まじり)

い、今、何と・・・

私は男を見た。
でっかい甘えん坊さんみたいなうるうるした目を女性店員に向けている。
60代、慎ましやかに象印と共に生きてきた男がである!

げっ!

慣れた口調で女が「何言ってんのぉ」と返すも、男は
「ええぇ~、だって可愛くて食べちゃいたいんだから~」。
私の存在はまったくの無視。
彼の心はもはやトップ オブ ザ マウンテン、
オーバー ザ レインボーなのである。
わたし、ココにいますから~っ!!

それでも私は二人に完全抹消されていた。
図らずも市原悦子のベッドシーンを目撃してしまったような
いてもたってもいられない気持ちになった。
そしてどうしたものか、食べたくもない珍味コーナーへ移動して、
いてもたってもいられない、この不自然な二人について考えたのだ。

この男は店長で女はやっと見つけたパートの仕事。
セクハラ相手も仕事のうち・・・
いや、待てよ。
年老いた店長がこんな深夜に働くか?
だとすれば、一族の反対を押し切って、代々続く商店をコンビニに替えた
年の離れた夫婦・・・
いや!違うだろう。
もしや遅咲き、熟年の恋?彼女は小5の男の子を抱えたシングルマザー。
見たくはないがナイスファイトな中高年。
いや・・・

「いらっしゃいませぇ~。こんばんはぁ~」
考え付いたシチュエーション、ざっと10。
男の声で私ははっと我に返った。
男は平然とレジに立っている。

「・・・」

深夜に何をやっているんだ・・・。
どっぷり我に返った。自分のヒマさにへこむ。
もうさっさとコーヒーババロアを買って帰ればいいのだ。
帰ろう!帰ろう!もっと楽しいことがあるはずだ!
気を取り直して再びデザートコーナーへ戻った。

ところが、デザートコーナーに戻ると、
コーヒーババロアは既に彼女の厳しいチェックの末、
他の甘味共々きれいに棚から期限切れカゴへ大移動されていた。
そこにはどうみても誰かが一回落っことして戻したようなプリンがひとつ
残っているだけだった。

「スプーンおつけしますかぁ~。ありがとうございます~。またどうぞ~」
男は何もなかったかのように淡々とレジ袋にプリンを詰めた。
彼の心はもう山の頂上でも、虹の向こうでもなく、
レジの中にすっぽり収まっていた。
女の姿は振り返らなかった。

ちっちゃな袋を下げ、自転車を漕ぎ出すと、
師走の冷たい風が鼻に当たって顔全体に広がった。
寒さにぶるっと一回体を震わせると、
妙な後味の悪さが白い息と共に夜空に舞い上がった。
と、同時になにやらネタをつかんだ嫌らしい笑みをも、
私は浮かべていた。

ぐちゃぐちゃのプリンはべちゃっとしていて案の定旨くなかった。
でもそれは、あの出来事の代償と思えば悪くもなかった。

今夜も行こう!
あの!コンビニへ!!
明日も行こう!
あの!深夜のコンビニへ!!

konbini.jpg
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category: 完了形:自己満足系コラム

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